企業はキャリアブレイク経験者の採用にどのようなイメージを持っているでしょうか? 「ブランクがあるから即戦力にならない」「スキルは落ちていないか?」「企業文化に馴染めるだろうか?」などネガティブな意見が多いでしょう。でも、キャリアブレイクは決してマイナス要素ではなく、むしろ、経験者の自己成長や新たな視点を企業にもたらす可能性を持っています。キャリアブレイクという貴重な経験を積極的に評価することで、企業は人材不足への対策として多様な人材を獲得し組織の活性化につなげることができます。この記事では、キャリアブレイク経験者の採用で企業が持つ悩みに対し具体的な解決策、企業が期待することは何か?について解説します。
引用元:正社員の人手不足割合は51%、トップは「情報サービス」業界の71.9%<人事ポータルサイトHRpro>
1、キャリアブレイク経験者採用会社側の悩み
(1)スキルや経験は陳腐化していないか?
キャリアブレイク期間が長くなると、その間に培ってきたスキルや経験が陳腐化してしまうのではないかという不安があります。特に、技術革新のスピードが速いIT業界などでは、実際にブレイク期間中に最新の技術や知識に触れていない場合、業務への適応が難しいのではないか?と考えます。また、以前の職務経験が現在の企業の業務内容と合致するかどうかの判断も難しく、採用を見送ってしまうケースがあります。
(2)ブランク期間のネガティブなイメージ
実際には、キャリアブレイク期間を単なる「空白期間:ブランク」と捉えられてしまい、そのため仕事に対するモチベーションや意欲が低いのではないか?という不安があります。また、企業によっては、キャリアブレイクを「逃げ」や「責任感の欠如」と捉えてしまったり、特に、ブランク期間中に社会との接点が少なかった場合、企業文化への適応やチームワークを円滑に築けるのか不安に感じる企業も多いです。
(3)会社組織への適応力に問題はないか?
組織文化への適応
長期間、会社組織から離れていた場合、企業独自の文化や価値観、働き方への順応に時間がかかるのではないか?と不安があります。特に、チームワークを重視する職場環境ではコミュニケーションや協調性に不安を感じます。
キャリアに対する考え方の変化
キャリアブレイクの理由によっては、仕事に対する価値観や働き方が以前と変わっている可能性があります。そのため組織の一員として、会社の方針や目標に共感し貢献してくれるかどうかが不安材料になります。
周囲の社員との関係構築
ブランクのある社員を受け入れることで、既存社員のモチベーションが低下したり、不公平感を感じたりするのではないか?また、年齢やキャリアの違いから既存社員との良好な関係を築けるのか不安になります。
離職リスク
キャリアブレイクの理由が個人的な事情や曖昧な場合は入社後も再び同様の理由で離職するのではないか?と不安があり、そのため採用コストを無駄にしないためにも長期的に活躍してくれる人材を見極める必要があります。
(4)採用基準の不明確さとミスマッチ防止
評価方法の難しさ
キャリアブレイクの理由や期間は人それぞれであり、従来のスキルや経験に基づく評価軸だけでは、キャリアブレイク経験者のポテンシャルを正しく判断することが難しい。そのため、ブランク期間を考慮した選考基準を明確に定めないと採用担当者の主観に左右される可能性があります。
受け入れ体制の整備
職場復帰するキャリアブレイク経験者に対して、どのようなサポートを提供すれば良いのか具体的な方法が不明確です。そのため既存のチームに円滑に溶け込めるか?コミュニケーションや協調性の面で不安があります。
採用コストの増加
ブレイク期間の評価が難しいことから、入社後のミスマッチのリスクが高まる可能性があります。特に、ブレイク期間によって不足している知識やスキルを補うために、通常の採用よりも教育・研修コストが増加します。
仕事へのモチベーション、意欲
ブレイク期間中に仕事への意欲が低下していないか?あるいはキャリアブレイクの理由によって、仕事に対する価値観や優先順位が変わったことがマイナスに働き、入社後長く勤務してもらえるかの不安があります。
キャリアプランとの不一致
キャリアブレイク後のキャリアプランが会社側の期待と一致しているか?は大切なポイントです。なぜなら復帰後の目標や、将来的なキャリアパスに曖昧さがあるとミスマッチにつながる可能性があります。
(5)スキル不足への悩み
ブランク期間によるスキル低下
キャリアブレイク期間中に、業務に必要な専門知識や技術が陳腐化したり、実践的なスキルが低下しているのではないかという不安があります。特に、技術革新の速い業界ではブレイク期間がスキルギャップになる原因です。
【例1: ITエンジニアの場合】
数年間のブランクで最新のプログラミング言語やフレームワークについていけない不安
【例2:営業職の場合】
市場動向や顧客ニーズの変化に対応できないのではないかといった不安
業務へのスムーズな復帰への不安
ブレイク期間を経て、職場環境や業務ペースに馴染むのに時間がかかり、即戦力として活躍できないのではないかという不安やチームでの協調性やコミュニケーション能力が以前より低下している可能性があります。
【例3: 長い育児休業後、職場復帰した場合】
業務と家庭の両立に苦労したり以前のような業務量をこなせない不安
最新の業界動向や知識の不足
キャリアブレイク期間中に業界の最新動向や技術トレンド、法改正などに触れる機会が少ないことから、情報収集能力やキャッチアップ能力が低下しているのではないかという不安があります。
【例4: マーケティング担当者の場合】
最新のデジタルマーケティング手法やSNSトレンドを理解できていない不安
【例5:人事担当者の場合】
労働関連法規の改正に対応できていないのではないかの不安
会社側がキャリアブレイク経験者に対する意識や面接などでのチェックポイントについては【知っておこう!】キャリアブレイク者チェックポイント、会社側意識で詳しく説明していますのでご覧ください。
2、キャリアブレイク経験者採用会社側の解決策
キャリアブレイク経験者が意思して取り組んできたことは【後悔しない過ごし方5選】キャリアブレイク前→中→後するべきことで詳しく説明していますのでご覧ください。
(1)スキルや経験の陳腐化なく即戦力になる解決策
採用業務の改善
通常の面接とキャリアブレイク経験者の面接は区別することが必要です。なぜなら「ブランクがある=即戦力にならない」という固定概念を捨て、個々のポテンシャルを評価するために、理由や期間中の活動についてオープンな対話をしたり数回に分けて偏見を持たずに深くヒアリングし個々の状況を理解します。
スキルや経験の評価のための4種類のテスト
実務スキルテスト
過去の経験だけではなく、現在のスキルレベルを測ることにポイントを置きます。
ケーススタディ
実際の業務で起こりうる課題に対する解決策を検討させ、問題解決能力や論理的思考力を評価します。
性格・適性検査
チームワーク、ストレス耐性、コミュニケーションスタイルなどを把握し、企業文化との適合性を確認します。
プレゼンテーション
自身の経験、強み、キャリアプランなどを発表させ、自己表現能力やプレゼンテーションスキルを評価します。
人物評価
過去の経験に加えて、ポテンシャルや意欲、成長力など、将来的な可能性も評価できるチェックリストを作成します。なぜなあらキャリアブレイク期間中の過ごし方や、そこから得たスキルや経験と今後のキャリアに対する考え方などを総合的に判断できます。
トライアル期間の導入
実際の業務を通して適性や能力を見極めるため、まずは簡単な業務からスタートし、徐々に難易度を上げ本採用後の業務内容に近いものへ徐々にステップアップしていく業務を通して、ブレイク期間中に変化した部分や新たなスキルを見極めます。
(2)自社組織への適応力とミスマッチへの解決策
ブレイク期間をポジティブに捉える
キャリアブレイクの理由(育児、介護、留学、病気療養など)を丁寧にヒアリングし、それぞれの経験から得た成長や変化に着目することで、ブレイク期間を通じて培われた新たな視点や価値観、柔軟な思考力などを積極的に評価します。
ポータブルスキルに注目
ポータブルスキルは業種、職種に関係ないスキルで個人の基盤となるものです。そのためブレイク期間前後の経験から得られたコミュニケーション能力、問題解決能力、自己管理能力などを評価します。
採用プロセスの見直し
スキルやキャリアだけでなくポテンシャルを重視するために、応募者の潜在能力や入社後の成長可能性を評価するため、ブレイク期間中の経験や、仕事への意欲、キャリアプランなどを深く掘り下げて質問し人物像をより深く理解します。
受け入れ体制の整備
経験豊富な社員をメンターとして配置し、ブレイク期間を考慮した丁寧なOJT(On-the-Job Training)を実施し、業務に必要な知識やスキルを段階的に習得させます。更に定期的な面談で不安や疑問を解消しキャリア目標の達成をサポートします。
モチベーションや意欲の評価
キャリアブレイクの理由や将来のキャリアプランについて詳しくヒアリングすることで、仕事に対する価値観や企業への志望度を丁寧に確認できモチベーションの維持や意欲を評価します。
柔軟な働き方の提供
時短勤務やフレックスタイム制など、個々の事情に合わせた働き方として、リモートワークや在宅勤務制度を導入し、働きやすい環境を整備します。
既存社員への理解促進
キャリアブレイクの意義や多様な働き方について、社内研修や情報共有を通じて社内への理解を深め、キャリアブレイク経験者を採用することでチームや組織が活性化されるメリットを伝えます。
(3)スキル不足への解決策
入社後の研修・教育体制の充実
キャリアブレイク経験者向けのオンボーディングプログラムや研修制度を整備します。OJTやメンター制度を通じて、業務に必要な知識やスキルを体系的に習得できる環境を提供します。
例えば、、業界動向や技術トレンドに関する研修、チームでの協業を促進するワークショップ、個別のキャリアプランに基づいた育成プログラムなどを実施します。
3、会社側がキャリアブレイク経験者に期待すること
(1)リスクと同時に大きなチャンス
キャリアブレイク経験者の採用は、企業にとってリスクと同時に大きなチャンスです。ブレイク期間中の経験やスキルを正当に評価し適切にサポートすることで、即戦力としての活躍だけでなく組織の活性化にも繋げることができます。キャリアブレイクを経験したからこそ得られる価値を理解し、多様な人材が活躍できる環境を整えることが企業成長に繋がります。
多様な視点
異質な経験や価値観を持つ人材は、既存社員にはない独自の視点や価値観を持ち、組織に新たな視点や発想をもたらしイノベーションを促進します。
柔軟な発想力
長く離職するというリスクを承知してキャリアブレイクした経験者は、既存の枠にとらわれない柔軟な発想や問題解決能力を身につけている可能性があります。
主体性、自律性
ブレイク期間中に自分自身を見つめ直すことで目標に向かって自律的に行動する力を身につけ、課題解決や新しいことに挑戦する意欲の高さが期待できます。
成長意欲
ブレイク期間中に新たなスキルを習得したりキャリアアップをした人は、小さな達成感を繰り返し体験しているので今後も継続して成長意欲が高い可能性があります。
組織への貢献意欲
ブレイク経験者は特異な体験や習得した資格やスキルアップ内容を実際の業務に活かして成果を出し、組織に貢献したいという意欲が強い人材が多い。
(2)組織の活性化に繋げる
企業はキャリアブレイク経験者を単なる「即戦力」だけではなく、多様な視点や能力を持つ人材として組織の活性化に繋げることができます。
高い自己理解と自己管理能力
ブレイク期間中は自分自身と向き合いキャリアについて深く考える機会です。そのため、いつまでに、どんなスキルアップをしたいか?、そのために何をしなければいけないか?など、、自己理解度が高く、目標達成に向けた自己管理能力に長けています。
適応力や柔軟性
ブレイク期間中は自由な時間や環境に恵まれますが、予期しない変化や不確実な状況への対応も経験しているため、新しい環境への適応力や変化への柔軟性の高さが期待できます。また、ブレイク期間の遅れを取り戻そうと積極的に新しい知識やスキルの習得に励みます。
組織の活性化
既存社員にとっては、キャリアブレイク経験者は多様なバックグラウンドを持つ人材であり、好奇心、ライバル意識、協調性など色々な意識が生まれ刺激し合うことで組織が成長します。
(3)新たな視点や多様な経験、スキルを取り入れるチャンス
キャリアブレイク経験者には、単に過去のスキルや経験だけではなく、ブレイク期間中に培われた新たな視点や価値観、成長意欲を期待きます。
これらの点を十分に理解し、適切な採用・育成を行うことでキャリアブレイク経験者は企業にとって大きな戦力となります。
多様な視点・経験
ブレイク期間中に培った新しい視点や経験を、組織に持ち込み、仕事以外の活動を通じて得た知識やスキルを業務に活かし、従来のやり方にとらわれず新たな発想でイノベーションや創造性の向上に貢献できます。
仕事への高い意欲・責任感
一度キャリアを中断した経験は、まざまな困難を乗り越えるために粘り強く対応できる責任感を身につけました。特に、仕事に対する価値観や優先順位が明確で与えられた業務に対してコミットメントが強く、最後までやり遂げる高いモチベーションと責任感を持って取り組み自身の成長や組織への貢献に意欲的です。
4、キャリアブレイク経験者の会社側まとめ
キャリアブレイク経験者の採用は、企業にとって大きなチャンスです。従来の採用基準にとらわれず、彼らの経験や能力を適切に評価し、活用することで、組織の活性化やイノベーションの創出につながります。
キャリアブレイク経験者採用における企業のメリットは「新しい視点や発想力」「変化に柔軟に対応できる能力」「自己成長意欲の高さ」「多様な価値観の獲得」「組織の活性化とイノベーション促進」「キャリアブレイクで得た経験を組織に還元」などです。
キャリアブレイク経験者採用における企業のネガティブなイメージや悩みを解決すために企業が取り組むことはキャリアブレイク経験者の価値を理解し即戦力となるための「採用プロセスの見直し」「スキル評価テストで見える化」「受入体制の整備」「既存社員への理解促進と教育体制」です。