中国日本語教師には向き不向きがあります

この記事でわかること

自分が中国で日本語教師に向いているか向かないか?悩んでいる方も多いでしょう。どんな職業にも必ず向き不向きがあり難しい課題ですね。

私は2000年頃から長く中国に在住し、2013年から自身でも日本語教育事業を展開しながら大学で現役日本語教師をしている経験から向き不向きの基準になる以下内容を説明します。

◯向いている人ポイント10個

◯向かない人ポイント5個

◯Q&A内容

自身の強さ、弱さを分析しながら中国に向いているかどうかのご参考にしてください。私はこの国が好きなのでストレスは強く感じたことはありませんが、日頃の生活面では言葉の壁があり多少のストレスはあります。嫌いなことや我慢できないことを無理し過ぎて楽しい中国生活、日本語教育に悪影響してしまうことだけは避けましょう。

目次

1、中国日本語教師に向いている人

中国日本語教師には向き不向きがあります

同じ日本語教師でも日本国内と中国ではその人の性格に向き不向きがあります。中国の生活環境だけでも旅行と駐在では大きな違いがあり毎日のストレスが積み重なってしまう人も多くいます。その上日本語が通じない学生に日本語を教えるわけですからストレスはかなり大きいです。そんな環境で向いている人はどんな性格なのか長年の中国生活で見て感じたことを以下説明致します。

(1)中国が好き

マスコミなどで連日騒がれている日中間情報に惑わされず、一つの外国として中国が好きであることが大切です。日本語を中国人学生に教えるためには日本が好きで、中国も同じように好きになることで”日本文化や習慣、中国との違い”などを日常の授業に含めることができます。日中間情勢に興味を持ちながら、第二の母国として思えるほどの気持ちが大切です。

(2)中国生活に興味がある

上海、北京などの大都市では買い物や交通など非常に便利ですが、地方都市に行くと30-40年位前にタイムスリップしたような街並みが残っています。実はこれが本当の中国なんです。経済発展を遂げた大都市と地方都市では大きな生活環境の違いがあります。日本料理店も無ければ、日本食材店もない、浴槽がなくシャワーだけ、騒がしい日常、地域によって全く異なる中国語の広大なこの国の生活に興味を持つことは、生活面で余計なストレスを溜めないコツです。

(3)日中友好活動に貢献したい

学生に日本語を教えるゴールは大学卒業ではなく社会へ輩出させることです。その社会の一部に日本留学、日系企業への就職、日本と関係のある仕事に従事してもらい、近い将来、日中友好活動の一部分になってもらう先導役が日本語教師です。日中友好は日常の民間レベルでの活動が大きな基盤になり、それをまとめているのが国家間の友好活動です。日本語教師はその輩出口にいます。

(4)孤独に強い『LonelyではなくOnly』

邦人多い順位地域別邦人人口
1上海約41,000
2香港約26,000
3北京約11,000
4蘇州約5,500
5広州約3,900
外務省(2005年資料)
邦人多い順位国別邦人人口
1 アメリカ合衆国(米国) 429,889
2 中華人民共和国(中国)107,715
3 オーストラリア 93,451
4 タイ82,574
5 カナダ 70,892
6英国 63,653
7 ブラジル 48,703
8 ドイツ42,135
9 大韓民国(韓国)41,238
10 フランス 36,347
外務省(2022年資料)海外在住全法人数:約1,345,000

107,715人が中国に長期駐在していますが、上海+香港+北京=約72%が集中していますので、その他の地域では日本人は非常に少なく日本人どうしの交流機会は日本商工会や県人会が主になります。そんな環境で中国人の友人がなかなかできない時は孤独感と共存になり”LonelyではなくOnly”と思える孤独への強さが必要です。 

(5)人に教えるのが好き

”教える”にはオリジナリティが必要だと感じています。教科書に書いてあることを教えるだけではネット授業で十分ですし、何のための対面式授業なのか?を考えながら毎日過ごしています。私は”習う日本語ではなく慣れる日本語”をテーマに、どうすれば1コマ/90分で日本語に慣れさせるか?ばかり考えています。

(6)話すことが好き

話すことは説明することとは違います。話し聞くことで学生が苦手にするところ、興味を持つところがわかります。それ以外のことは資料を見せるだけでできるだけ説明しないようにしています。雑談力+話す力+聞く力を授業の柱にしています。

(7)独立心旺盛な人

大学内は会社と異なり中間管理職がいないので日頃の教師の評価をしていませんし、外国人教師を平等に評価する標準化もありません。そのため自分は自己管理し、付加価値を付け、ビジョンをもてる独立心が必要です。

(8)給料以上のやりがいを感じる人

日本語教師は中国人にとっては一般企業よりも高待遇な職業として人気ですが、外国人教師にとっては給料が安いです。上海や北京などの大都市圏と地方都市では差があります、以下が一例です。この給料は日本人の若い世代には厳しい金額です。そのためシニア層の日本人教師が大半です。この給料以上の付加価値や考え、やりがいを見つける必要があります。

地域別給料事例
上海、北京、広州10,000-13,000人民元( 190,000-24,7000円)
大連、重慶、成都8,000-10,000人民元(152,000-190,000円)
1人民元=19円で計算

(9)アイデア力がある人

大学の授業は1コマ/90分(45分+10分+45分)です。この短い授業をどのように組み立てるか?教師のアイデア力が必要です。以前、日本人教師の方々を見学する機会があり見ていると、単に教科書を読み復唱させ、たまに、学生に読ませることを延々と続けます。高齢の教師は途中で椅子に座り読んでいる光景を見た時、思わず恥ずかしくなりました。学生が、”あー楽しかった、疲れた、緊張した、、”などが聞こえてくるような授業の組み立てが必要です。

(10)研究熱心

ネット授業を見たり、いろんな教科書を買い漁り自分だけの90分間の組み立てができるように常に研究します。私は教科書とプロジェクターに移す資料の2通りを授業で使っています。資料を作るのは手間がかかり大変ですが、大変なのは初年度だけです。日本人教師に課されている会話授業は”発音+文法+事例文”だと考えています。文法を教えるには”間接指導(中国語+日本語)”が必要になると思われがちですが少々違います。”見せて+話して+聞かせて+話させる”ことを資料い”直接指導の授業ができます。

2、中国日本語教師に向かない人

残念ながら向かない人もいらっしゃいます。1項(1)ー(10)ができない人以外に以下の人は向かないです。

(1)話すより説明する人

”教える≠説明する”であり、ついつい授業に熱が入り日本語を説明してしまう人が多いです。これは中国語がネイティブな中国人日本語教師の形(”你好”は”こんにちは”の意味です)ですので、中国語が苦手な日本人が日本語で日本語を説明してしまうと学生にとっては退屈で難しくて理解できない授業になってしまいます。

(2)+αがない人

”教科書を教える”人が多いです。教科書は学生が復習のために後で見てもらえればいいもので、”教科書で教える”ようにし+αとしてオリジナリティを出さなければ付加価値は付けられません。当然、付加価値がなければ、どんな教師でも同じになり長く安い給料の待遇で働くことになります。

(3)なんとなく日本語教師になりたい

日本がなんとなく嫌になったから、日本で教師をやっていたから、なんとなく中国に行ってみたいから、、など”なんとなく”の気持ちは必ず学生に伝わるものです。そんな教師を見て、学生はなんとなく授業を受けてみよう!となり結果日本語力は上がりません。自身の強さ弱さを分析して、私はなぜ日本語教師になりたいか?を明確にすることをお勧め致します。

(4)短気な人

中国語の発音は日本語のように母音や子音がはっきりしません。また、中国は北京語、上海語、四川語、広東語の全く異なる4つの中国語があり、さらに地方なまりの地方弁があるので、母音や子音をはっきり発音できない学生も多いです。語学は予習より復習が大事ですが、宿題や復習をやらない学生も多いです。そのような学生を相手に教えて、結果が出るのを気長に待つためには短気な人は向いていません。

(5)大小関係なく持病がある人

上海や北京や香港のような大都市圏には、外国人用の大きな病院がありますが、地方都市にはありません。中国駐在でもっとも大切なことは健康管理です。大小関係なく持病をお持ちの人は現地では対応できないこともあるので万が一を想定すると、無理に中国に駐在する必要はありません。海外旅行者保険も中国では適用されますが、それは金額的な支援であって十分な医療が受けられるわけではありません。

私は持病はありませんが、長い中国駐在で1度目は右足アキレス腱損傷、2度目は胆石で入院したことがあります。その時は手術するなら一時帰国するので仮処置だけをしてもらうようお願いしたことがあります。幸運にも2回とも手術はせず、海外旅行者保険のおかげでキャッシュフリーで治療を受けました。

3、多くの方からご質問を頂きますので事例説明

Q1:日本がなんとなくイヤになり、中国で心機一転頑張ろうと思って1年たったが、やっぱり他の国が良さそう

どの国がいいか?ではなくせっかく縁あり中国に来られたのであれば、先ず日本を見直し好きなり同時に中国も好きにならなければ日本文化習慣は教えられないんです。他国に行っても同じことが言えます。

Q2:採用時の契約で大学のゲストハウスが無料だったので住んでいますが、半年ほど経った今不便なのでマションを借りたいんですが大学の家賃補助は交渉できますか?

労働契約はおそらく1年間だと思います。契約期間中なら変更の交渉できないでしょう。中国は契約社会ですので契約更新時に家賃補助の交渉をするのが良いでしょう。大学側が家賃補助してくれるか?いくら補助してくれるか?は大学側の人材確保状況によるので、交渉前に情報収集し交渉することをお勧めします。

Q3:教師として2年目になりますが、自分の評価基準、誰が評価するのか?わかりません。その評価結果が来年の私の労働契約のもとになると思うのですが、どう思いますか?

大学には会社のように人材評価をする部署や人、標準化はありません。また外国人を平等に評価できる人もいません。日本人が普通に思う勤労さを発揮すれば良いだけです。

Q4:2年目になります。契約期間中ですがに途中退職しても良いか?

労働契約には待遇や期間が記載されていますので、礼儀として継続できないことを大学が了解すれば円満退職です。もし他の大学へ転職するなら円満退職が必要です。外国人教師が取り合いにならないように大学間で給料額の協定を結ぶほど横のつながりは強いようです。時期が迫っていなければ契約満期まで働くことをお勧めします。

4、まとめ

中国日本語教師には向き不向きがありますので自身の強さ、弱さを分析することで中国に向いているかどうかがわかります。

向いている人特徴は中国が好きで、中国生活に興味があり、日中友好活動に貢献、孤独に強い『LonelyではなくOnly』、話し教えることが好きな人です。

向いていない人は説明好きな人で、なんとなくな気持ちを持ち、短気な人で持病のある人です。

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