中国の大学が求める日本人日本語教師像は自己管理能力

この記事でわかること

中国で日本語教師をするための日常の業務の進め方をどうするのか?言葉の壁、管理体制、わからないことがあった時にどうするのか?など不安を感じる方も多いでしょう。

管理方法の違いや業務の進め方は日中間で大きく異なります。ここでは中国の大学での実際の管理内容について説明します。

◯最初(時間割)と最後(成績登録、分析)の管理実例

◯学期末試験の準備から成績登録、分析までの進め方実例

私は2000年頃から長らく中国に在住し、2013年から自身でも日本語教育事業を展開しながら大学で現役日本語教師をしています。

以前に中国企業のコンサルタント業務をしたことがあり中国企業の組織、管理体制と大学はよく似ていてます。マニュアルもなく、日常の管理、教師の管理などをする部署がなく全てを自己管理で進めています。日本の常識から見ると非常識ですが中国では普通です。そのため大学側は大学が決めた概要に沿ってブレイクダウンし自己管理ができる人材を最優先に採用しますので多少の社会経験、中国経験、臨機応変さが必要です。

これらの現状を把握し、自己PRに上手に盛り込むことで大学側が求める人材に近づくことができます。日本のような組織管理から脱出し自身のキャリアップのためにも中国の日本語教師は魅力がありますのでご参考にしてください。

目次

1、学期の時間割は大学が決定します

日本人教師に求められるのは”学生の会話能力”です。しかし1年生から4年生までで会話能力は異なるので学年によって科目も異なります。例えば以下のような科目名です。この科目を2学期/年間、16コマ/1学期、90分/1コマで大学側が時間割を決定します。

学年日本語レベルJLPT実際の授業科目(1学期)実際の授業科目(2学期)
1年生入門〜初級N5級-N4級日語景情会話日語会話1
2年生初級〜中級N4級-N3級日語会話2スピーチ&論文
3年生中級〜上級N3級-N2級国際貿易基礎ビジネス日本語、Mail
4年生上級N2級-N1級就職活動支援
学年別日本語レベル事例

時間割は月曜日〜金曜日で授業科目が割り振られます。私が所属する大学の時間帯は8:50-17:25です。教師によっては都合の悪い曜日、時間帯がありますので事前に希望スケジュールを提出します。労働契約書には毎月のコマ数が明記されていて、時間割についての定義は記載されていませんので、自身の都合である程度調整してもらうことが可能かを確認しましょう。私の場合は”コマ数は28コマ/月”が記載されていて、希望スケジュールは記載されていなかったので承認してもらえるかどうか?誰に?いつ?どのよに連絡するか?などを確認しました。

私の授業コマ数の実績では1学期は20コマ/月、2学期は24コマ/月です。希望時間割は前学期が終了した時点で日本語科准教授へ希望曜日をMailで連絡することで、ほぼ希望の時間割にしてもらっています。大学が決定する時間割は最多で4コマ/日ですので、2コマ/1日x3日間x4週間=24コマ/月になり、週休4日間です。例えば、第一希望:火曜日、水曜日、木曜日、第二希望:月曜日、火曜日、水曜日で時間帯は一任します。のように事前連絡をします。

時間割&時間月曜日火曜日水曜日木曜日金曜日土曜日日曜日
1(08:50-10:30)
2(10:45-12:25)日語会話1
昼食休憩
3(13:50-15:30)スピーチ&論文Email
4(15:45-17:25)日語会話1日本語コーナービジネス日本語
2023年02学期の時間割事例

2、科目により教える内容は自身で決定します

(1)1学期コマ数と1コマの配分で教える内容は自身で決定します

16コマ(16回の授業)で終了

◯14回でレベル毎に区切れる教科書を選定

◯1コマは想定外の休講、1コマは確認テスト

1コマ45分授業+10分休憩+45分授業

◯90分を3分割します

◯会話50分+文法20分+練習問題20分

(2)毎日成績を記録します

大学の規定は”通常授業成績(70%)+学期末テスト成績(30%)=100%”だけで、教師の判断に任せられますのでその規定に沿って成績管理をします。私は1授業の間に最低1回以上/1人は話させて出欠席+通常授業成績を5段階で毎日記録します。例えば1年生の場合”N5級レベル”、2年生の場合”N4級レベル”、3年生の場合”N3級”、4年生の場合”N2級レベル”で聞かせて話させた結果を1−5点で評価し、確認テストと合わせて100点満点で成績を記録します。担当教師が採点した成績を日本語科事務所へ提出し正式な成績として大学のサーバーへ登録された後学生が見ることになります。

学生からは毎学期1−2人程度は”なぜこんな成績なのか(不満)?”問い合わせがありますのできちんと説明できるように毎日の積み重ねが必要です。また、日本語科事務所からは過去1度もクレームを付けられたことがない位、担当教師に一任されています。これは大学によって規定が異なると思いますが、この日常業務の管理を自己管理でしなければなりません。

3、日常の授業視察はほとんどありません

各教室にはセキュリティ目的でカメラが設置され、プロジェクターとマイクを使い授業をしますので、授業風景をチェックできる環境になっていますが、過去に一度も授業の視察や後で授業の進め方などの改善提案はされたことがないほど教師の自己管理に任されています。

4、学期末テストの作成と採点

STEP
学期末テスト準備

テスト範囲を決定します(時間割:第15コマ目頃に決定します)

STEP
学期末テスト問題作成

テスト問題と解答用紙、模範解答をA案とB案の2種類作成します

STEP
学期末テスト内容の承認

日本語科事務所で承認の署名を取ります

STEP
学期末テスト期間開始

テスト日程を調整し、試験会場を決定します

STEP
学期末テスト開始

テスト実施

STEP
採点処理

回答用紙を回収しテストの採点し、分析表(平均点、偏差値)作成します

STEP
成績表作成

成績表作成と大学のサーバーへ登録します

STEP
日本語科事務所へ報告

テスト問題、解答用紙、模範解答、成績表を日本語科事務所へ提出します

上記(1)から(8)までの期間は約2週間です。『(1)テスト範囲を決定から(4)テスト日程を調整し試験会場を決定』を1週間で準備し、また『(5)テスト実施から(7)成績表作成』までを3−4日程度でやるため集中して忙しくなります。”授業+テスト作成+採点+成績登録”を全て一人の担当教師が責任をもって迅速に進めるために、何をどうやって進めればいいか?進め方やマニュアルなどがないため、初年度はかなり混乱するでしょう。わからない時、中国人日本語教師に聞き、理解して優先順位をつけ作業するにはある程度の社会経験がないと難しいでしょう。

5、まとめ

大学側は一連のカリキュラム概要だけを決定し全て担当教師に一任します。最後に学期末の成績表だけを見ますので、大学が求める日本人日本語教師像はある程度の社会経験があり、日常の自管理能力がある人になります。

大学が設定した概要を具体的に細分化して通常の授業カリキュラムへブレイクダウンします。

通常授業の進め方は担当教師に一任します。

テスト準備から採点、学生の成績決定は日頃の成績の積み重ねが必要です。

実際の教育現場では、授業の進め方や採点、成績の付け方は担当教師に一任します。

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