中国日本語教師は資格より社会経験と指導方法

この記事でわかること

中国で日本語教師には資格よりもどんな指導方法ができるか?を重要視することをご存知ですか?

私は2000年頃から長く中国に在住し、2013年から自身でも日本語教育事業を展開しながら大学で現役日本語教師をしている経験から実際にどんなことに気をつけて指導しているか説明します。

◯入門編内容:1年生

◯基礎固め内容:2年生

◯中級編内容:3年生

◯応用編内容:4年生

大学では4年生になると卒業論文などで時間が制限され、授業はほとんどなくなり1年生〜3年生の授業が主です。3年生終了時にN1-2級レベルを目指しています。日本人教師には1年生から3年生までは1授業(90分)/週x32回/年間しか授業がないので、教師側のオリジナリティある効果的な指導方法が問われます。

目次

1、大学が求める日本人教師は公認日本語教師資格より指導方法

年間カリキュラム(授業内容、時間割、参考となる教科書)は大学が決定します。そのカリキュラムに沿って日本語指導ができ、プラスαとして学生の要求を満足できる提案力ある日本人教師を求めています。現在作成されるカリキュラムは今までの実績をもとに決定されますが、年々学生の要求は変化しています。

大学側は変化する学生の要求に対応するために、社会経験により自己管理能力が高い人は大学は高く評価、全国的に教師不足な現在では未経験者でも大歓迎します。大切なことは応募時にしっかりと自己PRをすることです。

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(1)入門編の授業内容(1年生)

<従来>中国人教師が中心になり50音図や単語、文法を指導します。日本人教師は1学期中頃から基礎的な日本語会話の授業を始めます。私も採用された初年度はこのカリキュラムに沿っていましたが、”ひらがな”は読めるが”カタカナ”が読めない学生が多かったり。例えば小さな”っ”、”言った”の”っ”を伸ばし発音できなかったり、特に”2文字単語の高低発音、”例えば”橋と箸”、”日本と2本”を間違えて覚えている学生が多いです。

初めてネイティブな日本語を聞き、話す学生にとっては、最初に習った発音を修正するのは2倍以上の時間と努力が必要で混乱しています。

<現在>1年生は最初(50音図や単語、文法)から会話指導をしています。日本語が初めての学生に教えるにはどうしても”間接指導”で中国語が必要です。私は可能ですが、中国体験の少ない方々にとっては難しいすが、間違った発音を修正する学生の身になると教師の努力次第で授業をすることができます。

そこで”見せて+話して+聞かせて+話させる:直接指導”ができれば、日本人教師でも十分に授業ができます。そのためには、PowerPointなどで”見せる資料”を作り授業で使います。この違いは、今まで頑張ってこられた日本人教師の方々の指導法が教科書を教えて、”読んで+聞かせて+読ませる”授業がメインだったことが原因です。

(2)基礎固め編(2年生)

<従来>日本人教師は1年生の延長で”読んで+聞かせて+読ませる”を指導されました。1年生の時との違いは教科書が難しくなっているだけで、”教科書を教える”ことは変わっていません。会話の授業で学生は、中国人教師から教わる文法や事例文と一致していなく、まだ習っていない文法が会話授業に多く、単に読むだけで理解できない状態です。

<現在>2年生はN4-3級の単語、文法、会話を”教科書で”指導します。ご周知の通り、日本語は’”名詞、動詞、形容詞、助詞、副詞”で構成され、時制の一致や動詞や形容詞は変化します。それら単語の発音+文法と短文事例での使い方+短文会話文を教科書や他の資料からPickupしPoerPointで作成し、”見せて+話して+聞かせて+話させる:直接指導”をします。

”見せて+話して+聞かせて+話させる:直接指導”は日本人教師と学生間で”オウム返し”を2−3回繰り返しながら進めていきます。また”話し方”としてスピーチの仕方、作文、論文の書き方を指導しています

(3)中級編:習うから慣れる日本語(3年生)

<従来>”ビジネス日本語”を教科書に沿って”読んで+聞かせて+読ませる”を指導されました。2年生の時との違いは”丁寧語、尊敬語、謙譲語”があることです。そのビジネス日本語の中には、可能形、意志形、使役形なども含まれますが、日本人教師の会話授業では”教科書を教える”だけで、文法や構成は教えていません。

<現在>国際貿易基礎知識、ビジネス日本語、E-Mailを指導しています。国際貿易では、貿易とは何か?専門用語などの授業で、国際貿易の全体が理解できる授業です。ビジネス日本語では敬語、謙譲語の文法や構成と会話を指導し、E-Mailでは構成、書き方を指導しています。

就職を2年後に控え、社会ですぐ使える日本語として習うことから慣れることへの分岐点として学生に意識付けをすることが目的です。

(4)応用編:就職活動(4年生)

<従来>この授業はありませんでした。

<現在>履歴書の書き方(自己PR、志望動機の書き方)、面接時の自己PRの話し方を指導しています。現代の学生にとって”自己PR”で自分の強いところと弱いところを明確にし”志望動機”に繋げて履歴書を書くことは非常に難しいようです。

学生は就職活動をしなければいけないが、何をどのように始めたらいいのかわかりません。この授業で就職活動を目前として、直ぐに役立つ授業として昨年から始めました。

2、自分の強みを発揮できる指導方法は資格を上回る

自分の強みが”日本人”だけではなく、社会経験を活かして授業に盛り込むことで、生徒の好奇心を刺激し習う日本語を慣れる日本語として指導できます。社会経験がまだ少ない方は、”当たり前の日本文化や習慣”、”日本の大学生生活”、”ボランティア”、”友達関係”など、、何でも良いんです。それらの経験をN5級からN1-2級の教科書に沿って授業内容を考えることで日本人教師にしかできないオリジナリティのある授業は資格を超える魅力があります。

”1項の(1)ー(4)の<現在>”内容は大学側の承認を得て採用初年度から”4年間カリキュラム”として日本語科の授業内容になりました。

3、公認日本語教師と登録日本語教員をわかりやすく説明

1、現在活躍されている教師の可能を制限するものではありません

資格を取得するためには何十万円の授業料が必要でちょっと悩みますね。公認教師や登録教員資格がなくても日本語教師をすることができますが、教師募集をする日本語学校の募集要項には”資格取得者”と明記されているのをよく見かけます。”教師の活動を制限するものはない”といっても市場の反応が資格取得に動いているのは事実です。

2、外国人留学生へビザ発給の受け入れ学校(日本語学校)は法務省管轄なので登録日本語教員の登録が必要です

法務省公示校(登録日本語教員が必要)で働きたい場合は登録日本語教員にならなければいけませんが、法務省公示校になるためには日本語学校側も厳しい審査があり、全ての日本語学校が法務省公示校になれるわけではなので働き方は無数にあります。

3、教師人材の縮少に繋がると懸念の声もあり

現在の主力教師(約70%:ミドルからシニア層、アルバイト)の方々は登録教員の受験をしない人も多くなり教師数が減少します。日本語教師のメリットは、”老後のお小遣い稼ぎ”、”ボランティア感覚”、”主婦層の空き時間有効活用”があり、人件費を安く抑えることができています。この主力の方々が現場を離れてしまい若い世代の教師に一般企業同額の給料を支払えるほど日本語学校の待遇は改善されていません。

4、公認日本語教師と登録日本語教員について(旧名:公認日本語教師→改訂:登録日本語教員)

◯資格を持っていなくても”日本語教師”として働くことができますが、法務省告示校で働くことができません。

◯登録日本語教員資格者は法務省告示校で働くことができます。

この2つの型を今後法的にどのように改善するかで、人材不足となり教育の質にも影響していきます。

4、まとめ

中国の大学は日本語教師資格への拘りはなく、大学が’決めるカリキュラムを柱に学生のためにオリジナリティある授業を求めています。

JLPT内容に沿って”私なら◯○◯な日本語指導ができます”のような指導方法概要を応募する際の”自己PR資料”として作ることをおすすめします。そのために自分の強みは何なのか?を改めて見直すことが効果的です。

将来も日本語講師として活躍したい長期的なビジョンをお持ちの方は、資格を取り基本的な手法を身につけ更に自分の強み活かした指導ができれな強力な能力になります。

”登録日本語教員”の国家資格はインバウンド制の一環なので、市場実情に合わせて具体化していくことは間違いありません。

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